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2023年9月18日 (月)

どの情報を信じるか

8月23日にエヌビディアの決算(23年5-7月期)が発表されましたが、その後、いくつかの噂がマーケット(とくに米国)でささやかれています。

市場にはエヌビディア株を現物で保有している人(longのポジション)もいれば、空売りしている人(short sellers)もいますので、なかには意図的に怪しい噂を流している人もいるかもしれません。

噂は注意して聞いて、真偽を判断する必要があります。

いくつかの噂や流れてきた「情報」と称されるものを検証してみると・・・

【1】CEOが自分の会社の株を売っている

たしかにエヌビディアのジェンスン・フアンCEOは自分の会社の株を(彼が保有している分に比べれば)「僅か」ですが、売っています。

SECのファイリングを見れば分かるのですが、ナスダックによる開示(『こちら』)の方が見やすいかもしれません。

基本的に「Automatic Sell」と称される取引であり、SECのRule 10b5-1(『こちら』)に基づくもの。

過去のある時点で予め届け出たスクジュールに沿って自動的に売却されるものであり、よく見かける通常の取引です。

これを殊更に大々的に強調してSNSで発信し続ける意味が分かりません。

【2】 売上原価が殆ど増えていないのに売上だけが急増している

たしかに四半期ベースで見ると、売上は、

昨年5-7月期 売上 6,704百万ドル

今年5-7月期 売上13,507百万ドル

と急増しています。

一方で、売上原価は、

昨年5-7月期 売上原価 3,789百万ドル

今年5-7月期 売上原価 4,045百万ドル

とあまり変わりません。

これをもって売上を過大に計上しているのではないかと疑う人もいますが、過去の財務諸表を併せて読み解くと理由が分かってきます。

これは過去に中国関連ビジネスに関して米政府の規制が厳しくなった(とくに22年10月から米政府は当社高性能製品の「A100」と「H100」の輸出を禁止した)ことに関連します。

H100

   (NVIDIA H100 Tensor コア GPU) 

規制を受けて、エヌビディアとしては、主として中国向けに用意していた製品在庫に関して22年8-10月期だけで702百万ドルにも及ぶ減損処理を行いました(『こちら』)。

これらは主として中国のデータセンター向けの製品でした。そして前四半期では世界的なレベルで、これらデータセンター向けのGPUの需要が急増したことから、いったんは減損処理したGPUを、23年5-7月期には中国以外の先へ販売した(つまりすでに減損処理され、評価ゼロに近くなっていた在庫を販売した)ーこの結果、売上に比して売上原価は余り上昇しなかったものと考えられます。

【3】CoreWeave社向けの販売がおかしい

CoreWeaveは、かつてヘッジファンドで商品トレーダーをやっていたMichael Intrator(CEO)、Brian Venturo(CTO)、Brannin McBee(Chief Strategy Officer)によって2017年に設立された会社です。

クラウド サービス プロバイダーの会社で、今年4月に2.2億ドルをSeries B として調達した際に、エヌビディアも他の投資家とともに出資しています(出資の内訳はMagnetar Capitalが1.1億ドル、残りの1.1億ドルをエヌビディアと投資家のFriedman氏、Gross氏が分け合う形で出資;『こちら』)。 

なおCoreWeaveは、1か月後の5月に、Magnetar Capital主導により更に2億ドルの資本をSeries B extensionの形で調達しています。

グーグルやアマゾンなどがクラウドサービスを強化している中で、エヌビディアとしてもクラウド関連の会社との接点を強化していこうとの戦略があったものと思われます。

これ自体は普通の取引です。

エヌビディアがCoreWeaveに一部出資している事実を捉えて、CoreWeave向けの販売はエヌビディアによる一種の(子会社、関連会社への)押し込み販売に近いと主張する人たちがいますが、おかしな話です。

CoreWeaveはエヌビディアの子会社ではないし、上場前時価総額は少なくとも20億ドルと推定されていますから、エヌビディアの出資比率は5%にも満たない(恐らくは2%程度)と推定されるので、関連会社とも言いにくいと思います。

なによりもエヌビディアのH100は需要が供給をはるかに上回り、イーロン・マスクがドラッグを入手するよりも難しいと嘆くほど。

いま注文を入れても年内の納入は無理で、来年の第1~2四半期になると言われています。

それをわざわざ押し込み販売するような必要性を感じません。

もう一つ変な噂を流す人たちは、CoreWeaveが8月に行った借入がおかしいと言います。。

CoreWeaveはBlackstone と Magnetar Capital を主幹事としたシンジケート・ローンで23億ドルを調達しました。これはエヌビディアの半導体を担保にして実行されたものです(『こちら』および『こちら』)。

これをもって、『半導体を担保にとは、オカシイ』と声高に言う人がいますが、価値あるGPUを担保にローンを供与すること自体は特に問題とも思えません。

【4】TSMCの動向からして半導体市場の先行きが気がかり

これはロイターが先週金曜日(15日)に報じたもので、半導体の受託生産大手、台湾積体電路製造(TSMC)が主要サプライヤーに最先端半導体向け製造装置の納入を遅らせるよう求めたとのこと(『こちら』)。

リンクで貼ったロイターの記事以上のことは分かりませんが、たぶんロイターとしてはきちんとした取材をベースにこの情報を報道したのだと思います(つまり【1】~【3】とは違う)。

ロイターはこの情報の真偽をTSMCに確かめていて、TSMCは「市場での噂にはコメントしない」とのコメント。

このTSMCの発言も上記記事の中に入れて、報道しています。

このニュースにはマーケットは率直に反応、エヌビディアだけでなく半導体各社の株価は15日(金曜日)の米国市場で軒並み下落しました。

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2023年9月 3日 (日)

労働参加率

本日の日経新聞にもありますが、米国の労働参加率(下記注参照)が上がってきて、62.8%となっています。

2000年以降の労働参加率は下記のような形で推移。

Photo_20230903141101

             (上記はセントルイス連銀より『こちら』

新型コロナの影響で米国では55歳以上のアーリーリタイア層が増加したと言われています。

この層による労働市場への回帰は引き続き鈍いようですが、最近になって若年層の労働参加率が回復傾向にあると報じられています。

労働需給逼迫の緩和は「賃金上げ圧力を弱め、インフレ鈍化につながる」(上記日経記事)とのことですが、さて・・。

なお上記のグラフを鳥瞰図的に見ると、大きな傾向としては、労働参加率は減少傾向にあります。

この辺を論じた記事は幾つかあるのですが、例えば『こちら』などをご参照ください。

(注)労働参加率とは:

The labor force participation rate represents the number of people in the labor force as a percentage of the civilian noninstitutional population. In other words, the participation rate is the percentage of the population that is either working or actively looking for work.(米労働省)

要は、実際に働いている人と、働く意志があって職を探している人とを足し合わせた人たちの割合です。

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