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2023年10月10日 (火)

資産運用立国への道

2015年のことですが、米国のモーニングスター社が世界25か国の投信市場を評価しました(『こちら』)。

A:米国、韓国

A-:台湾

B+:英国

B:スウェーデン

B-:豪、スイス

C+:カナダ、ドイツ、タイ

C:南アフリカ、スペイン、シンガポール、香港

C-:日本

D+:中国

以来、日本は時として「運用後進国」と言われるようになってしまったのですが、

今週の日経ヴェリタス紙は、

『運用後進国 返上なるか』と題しての特集です。

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以下、記事の内容とは離れますが、

『運用後進国 返上なるか』に関する、私の個人的見解を述べます。

【1】ファンドの数が多すぎる

昔から言われてきていることですが、日本の投信業界では、販売会社の力が強いのが特徴です。

この結果、たとえば「新時代を切り開くAI銘柄の投信」といった具合に、

販売会社が売りやすいテーマに沿った投信が直ぐに組成される傾向にあります。

金融庁のレポート(『こちら』)によると、

日本で設定されているファンドの数(14,297本)は米国(10,237本)よりも多くあります。

結果として、1ファンド当たりの運用資産額(日本143百万ドル)は米国(2,793百万ドル)の20分の1しかありません。

運用会社は、規模の小さなファンドをたくさん抱えるということで、ある意味、自分で自分の首を絞めてしまっています。

『規模が小さいがゆえに信託報酬などのコストもしっかりと徴求せざるをえない』
       ↓
『結果、資金が集まらず、規模が大きくなっていかない』

といった負のサイクルに陥ってしまっています。

【2】運用会社は弱肉強食の時代

先月、三菱UFJアセットは、eMaxis Slimの全世界株式(オール・カントリー;通称オルカン)の信託報酬を0.0525%に引き下げました。

これだけ信託報酬が安くなれば、個人の資金は益々こうしたファンドに集中していきます。

ちなみに三菱UFJアセットは、eMaxis SlimのオルカンとS&P500の2本だけで純資産4兆円超を集めています。

これだけで、野村アセット(700本以上の投信を抱える)の3分の1の運用資産に達するわけですから『eMaxis Slim 強し』です。

このように 現在の投信業界では、信託報酬の引き下げ競争が起きているのですが、信託報酬が安いと益々そこに資金が集まる・・。

つまり言い方を変えると、強いところはますます強くなる(信託報酬を下げてもやっていける)。

業界はまさに弱肉強食の時代に突入していると見ることも出来ます。

【3】新NISA時代の独立系運用会社

日本の場合は独立系のシェアが極端に低い(日経ヴェリタス紙3面のグラフによれば6社で全体の1.5%程度)のが特徴です。

三菱UFJアセットや野村など非独立系が販売面で圧倒的パワーを持つのに対して、独立系は彼らほどの販売力がなく、量を集めることに限界があります。

よって非独立系との間で信託報酬引き下げの競争に陥ると勝ち目がなく、独立系がインデックス型を扱うのは得策ではありません。

独立系は、アクティブ系で圧倒的なパフォーマンスを上げることでシェアを獲得していくことを目指すべきだと思います。

たとえば米国でキャシー・ウッド率いるARKは一時3兆円を超える資金を集めました。

今ではARKのパフォーマンスが急落(よって資金も流出)していますが、3年前には世界的な注目を集めました。

なおNISAは1人1口座のみで、独立系がNISA口座を獲得するのは簡単ではありません。

しかし新NISAでも所詮、運用できるのはMax.で年360万円まで。

これを超えて課税口で運用している人は沢山いる筈で、独立系が高いパフォーマンスを上げれば、資金はおのずと集まってくると思います。

【4】海外勢の参入

 海外勢の運用会社が参入してくることで、良い意味での国際化が進むことが期待されます。

金融庁のレポート(『こちら』)によると日本の場合、ファンドの運用担当者の氏名が開示されているのは、全体の2%だけ。

一方で、米国の場合は100%運用担当者の名前が開示されています。

たとえばフィデリティの米国株ファンドではPM(ポートフォリオ・マネージャー)はWilliam Danoff氏。

フィデリティによれば『彼はピーターリンチの下でアシスタント運用担当者を務めたこともある』とのことです。

また海外ファンドの場合、資産運用会社がファンドの全保有銘柄を月次または四半期の頻度で開示していますが、日本では年に1~2回の頻度の開示に留まっています(上記金融庁のレポート)。

【5】最後に、個人投資家にとして押さえておきたいポイント

(1)ETFは経費率(コスト)が低く、株式と同じようにリアルタイムで相場を見ながら指値や成行注文が可能。

ダウ平均ならDIA、S&P500ならSPYとティッカーコードを入れるだけで、画面を呼び出せ、注文できます。

日本の投資家はETFをもっと利用しても良いかもしれません。

(2)デフレの時は、円で預金しておけば、お金の価値が上がるので、運用資金が減ることも特にありませんでした。

しかしこれからはインフレの可能性があります(現にインフレが始まっているとも言えます)。

よって円預金に置いておかないで、ぜひとも一部を投資に回してみることをお勧めします。

しかし日本には約14,000ものファンドがあり、どれに投資して良いか分からないという人もいるかと思います。

迷った時は、eMaxis Slimのオルカンや同じくeMaxis SlimのS&P500などの経費率の低い投信、あるいはETFに資金を入れてみては如何でしょう。

慣れてきたら、別のものを検討してみるといったスタンスでも良いかもしれません。

(3)来年1月から新NISAが始まるので、1月になったらすぐNISAを使おうと身構えている人もいるかと思います。

しかし、1月になるや否や、いっぺんに全額NISA枠を使い切るようなかたちで投資をするのはお勧めできません。

時間分散を図るようにしましょう。

* * *

なお本日出演した日経CNBCテレビ『日経ヴェリタストーク』では、こういった資産運用に係る諸点について議論しました。

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