ETF(Exchange Traded Funds)
本日は日経CNBCテレビ『日経ヴェリタストーク』に出演しました。
トッピクスはETFについて。
ETFとはExchange Traded Fundsの略。
証券取引所に上場する投資信託のことで、多くは株価指数などの指標への連動を目指します。
世界のETFの運用残高は1800兆円。
ETFは、金融商品の中で「20世紀最大の発明」とも言われます(日経ヴェリタス2/18号、第1面)。
これはどのように開発されたのでしょうか。
【1】ブラックマンデーに遡る
1987年10月19日のブラックマンデー。
米国市場はたった1日で22.6%も下落しました。
これは1日の記録としては、今日に至るまで歴史上最大の下落率です。
どうしたら、こういった下落は防ぎ得たのでしょうか。
事後検証や研究の結果、「市場にもっと流動性があれば、過度な暴落を防げたはず」との結論に辿り着きました。
当時は、先物やオプションの市場では、マーケット全体を取引出来ましたが、
現物市場(Cash Equityの市場)では、マーケット全体を売買できる単一の有価証券がなかったのです。
「この種の単一の有価証券があれば、市場の流動性が高まる」ー こう考えられて、開発されたのが、ETFです。
第1号となったのは、S&P 500の指数に連動するETFで、1993年に誕生しました。
SPDR(スパイダー;Standard & Poor's Depository Receipts の略)の名がつけられ、
「SPY」のティッカー・シンボルで取引されました。
現在、SPDRのSPY 1本だけで、日本円に換算して、74兆円の純資産総額(4,917億ドル)を有しています。
日本全体のETF残高(日銀保有分も含めて)が75兆円と言われていますので、SPY 1本で、日本全体にほぼ匹敵することになります。
【2】ETFには2つの市場がある
ETFには、「流通市場」と「発行市場」の2つの市場があります。
これについては『こちら』の記事によくまとめられていますので、ご覧になってみてください。
【3】ETFには3つの価格がある
もう一つ。
ETFには、「取引所価格」と「基準価額」、そして「インディカティブNAV(推定一口あたり純資産価格)」の3つの価格があります(『こちら』)。
2つの市場と3つの価格。
少しややこしいですが、これが分かるようになると、ETFの仕組みが理解できるようになります。
【4】日本の個人投資家がETFを買う時の注意点
いろいろな種類のETFが誕生してきていますが、個人投資家が実際に買う時には注意も必要です。
ひと言で言うと(すべての金融商品の評価に共通するポイントでありますが)流動性がきちんとあるか、
つまり売りたいときに、きちんとした価格で売れるか
という点に留意する必要があります。
具体的なチェック・ポイントは3つ。
(1)出来高(1日当たりの出来高)
(2)純資産残高
(3)基準価額と市場価格の乖離率
純資産残高について言えば、SPYは残高4,917億ドル(74兆円)です。
一方、日本では317本のETFが東証に上場されていますが、純資産残高30億円未満のものも少なくありません。
(3)の基準価額と市場価格の乖離の問題は、2018年に東証がマーケットメイク制度を導入したことで大分改善されました。
【5】日本のETFマーケットの特殊性
日本全体で、ETFの残高が75兆円と言われていますが、
日銀保有分を除けば、12兆~13兆円です。
一方、米国のETF市場は、1,100~1,200兆円と言われていますので、サイズで見ると、米国の100分の1です。
ただし本数で見ると、米国3,100 本 vs. 日本317本。
つまりサイズでは、米・日の比率が100対1でしたが、本数になると10対1となります。
これは1本あたりの運用資産残高が小さいものが日本には多くあることによるものです。
【6】投信を買うか、ETFを買うか
昔はETFの方が、コスト(信託報酬など)が安かったので、ETFの方がお勧めでした。
しかし最近は、eMAXIS Slimなど低コストの投信が出てきたので、どちらを選んでも大差ありません。
新NISAで「つみたて投資枠」を利用する場合は、ETFは使えません。つまり投信を選ぶしか手がありません。
新NISAには「つみたて投資枠」以外に「成長投資枠」もありますが、これについては投信でもETFでも利用できます。
投信は口数を設定して、何口買いたいと注文しても、幾らの単価で買えたのか、翌日もしくは翌々日になるまで分かりません。
一方、ETFは、スクリーンを見ながら、指値などでも購入出来ます。
こういったことから、ETFの方が好きだという人も多くいます。
この辺は人それぞれだと思います。
【7】日銀が保有するETF
日銀が持つETFは、昨年9月末で簿価37兆円に対して、時価61兆円。
つまり含み益が24兆円もあります(現在では含み益はもっと膨らんでいるはずです)。
この含み益は日銀にとっては有り難い数字だと思います。
というのも、9月末時点で、保有国債(586兆円)の含み損が10兆円あったからです。
いずれにせよ日銀はいずれ金融を正常化していくことになるものと思われ、ETFについても、
何らかの処置が必要になります。
ネットの世界ではいろいろな案が語られていますが、
たとえばGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)に、若干のディスカウントで、毎年少しずつ引き取ってもらうといった案も考えられうるかもしれません。
なお日経CNBCテレビ『日経ヴェリタストーク』は『こちら』でご覧になれます。
(未契約ですと最初の1分半ほどで切れてしまいますが・・)
| 固定リンク
コメント