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2024年5月18日 (土)

フォーム13F

米国の場合、運用資産が1億ドル以上ある機関投資家などは、SECに対してフォーム13Fを提出しなければなりません。

これは機関投資家が保有している株式を一覧表にしたものです。

提出期限は暦年の各四半期末から45日以内なので、3月末現在の数字は一昨日(5月15日)に提出されました。

今回、ウォーレン・バフェットがCEOを務めるバークシャー・ハサウェイが提出したフォーム13Fは『こちら』(注:その後、一部、修正も出されています。『こちら』など)。

バークシャーは昨年9月末と12月末、2四半期連続で、保有株式の1銘柄以上を一時的に非公開とすることの許可をSECから得ていました(『こちら』)。

市場では、この銘柄はどこなのかと、噂や憶測が飛びかっていました。

今回はついに、この「秘密の株式」が開示され、それが保険会社のCHUBBであることが分かりました。

このニュースが伝わるや、CHUBBの株価は一時8%ほど上昇(253ドル→274ドル)。

しかしその後は落ち着いています。

Chubb

バークシャーのCHUBBへの投資額は時価ベースで70億ドルほどなのですが、CHUBBの時価総額は1085億ドルほどあるため、バークシャーの投資はCHUBB全体の6%ほどに過ぎません。

* * *

ところで昨日、日経新聞(電子版)にバフェット関連の記事を寄稿しました(『こちら』)。

同じ記事が5月19日(日曜日)の日経ヴェリタス紙にも掲載されます。

なおこの記事は5月15日より以前に書いた為、バークシャーの最新のフォーム13Fは反映されていません。

この記事には、実はバフェット氏とFRB議長のパウエル氏との間には意外な接点があることも載っています(ご存知でしたか?)。

パウエル氏の人となりを知る上でも結構この辺の情報は重要だと個人的には思いました(あくまでも個人の感想ですが・・)。

なにせ、その言動で世界の金融が動いてしまう人ですから・・。

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2024年5月13日 (月)

宇宙ビジネスの現状と今後

本日は日経CNBCテレビの「日経ヴェリタストーク」に出演しました。

トピックスは宇宙ビジネスについて。

詳しくは『こちら』をご覧頂きたいのですが、以下、概要を簡単に記しておきます。

【1】日本の宇宙ビジネスの現況

今般、日本政府は宇宙戦略基金(10年で1兆円)を立ち上げた。

斯様に宇宙ビジネスは現在注目を集めている分野と言える。

ただ昨年1年間のロケット打ち上げ回数で見ると、アメリカが108回、中国68回、これに対して日本は2回。

残念ながら、現状、米、中、露が第1グループを走っているのに対して、日本と欧州は第2グループ。

ただ宇宙ビジネスのマーケットは大きく、しかも急速に伸びているので、幾つかの分野では、日本勢でもじゅうぶんに勝てるチャンスはあると思う。

【2】注目分野:①合成開口レーダー(SAR)

衛星から地球を観察する場合、普通の光学画像だと上空に雲がかかると撮影できない。

これに対して、電波は雲のような障害物を透過できる。

つまり衛星から電波を送り、跳ね返ってくる電波を受信することで、地表を観測できる。

ただこの場合に難点があって、宇宙のような遠いところから電波を当てても、ビーム角が広くなり解像度が落ちてしまう。

これを解決したのが合成開口レーダー(SAR)。

時系列に電波を照射して受信した結果をつなぎ合わせるという技術。

九州大学発のベンチャー、QPS研究所などがこの分野で活躍している。

【3】注目分野:②宇宙デブリ(ゴミ)除去

デブリ除去の方法としては、デブリを捕獲したり、レーザーを当てたりして、デブリを大気圏に突入させ燃やすことなどが考えられている。

しかしデブリは地球の周りを秒速7~8キロで周回している。これはライフルの弾丸の8倍のスピード。

これを捕獲するか、レーザー光線を当てるかと言っても、技術的ハードルはかなり高い。

この業界のリーダー格であるアストロスケールも当初は接着剤を使ってデブリを捕獲することを考えていたが、宇宙空間で粘着剤が劣化してしまうことが分かり、磁石に切り替えた。

現状はまだいろいろなやり方が考えられている段階と言えるかもしれない。

なおデブリについては積極的デブリ除去(Active Debris Removal, ADR)のみならず、デブリをこれ以上出さないことも重要。

つまりこれから打ち上げられる人工衛星は、寿命が来たら大気圏に再突入するための装置を搭載するといったことが重要になってくる。

【4】宇宙ビジネスはイノベーションに寄与するか

1961年にケネディ大統領が「10年以内に人間を月に到達させる」と宣言して、アポロ計画がスタートした。

それまで宇宙船の飛行ルートの計算は「手計算」で行われていたが、アポロ計画においてはコンピューターが導入された。

ソーラーパネルなどもアポロ計画で開発された。

経営学の分野では、ある目的があって、それに向かって組織として努力することで、イノベーションが生まれるという「目的工学」の考え方もあるが、宇宙ビジネスとイノベーションはこのように密接に関係していると言える。

たとえばアルテミス計画で要求される月面探査車は月の環境に耐える必要がある。

月面では、重力は地球の1/6、温度はマイナス170℃~プラス120℃、真空、強い放射線、そして昼が2週間続き、次に夜が2週間続く。

こうした環境に耐える車を開発することがイノベーションに繋がる。

もう一つ、別の視点だが、例えば、衛星を使ったリモート・センシングの機能は、人類が新しい測定の技術を入手したことに繋がる訳で、いろいろな分野に応用可能。

こうした新機能を応用していく、その結果、その先で新しいイノベーションが生まれるという側面もあるかもしれない。

【5】産学官の連携と政府の舵取り

国による「宇宙戦略基金」(10年間で1兆円)がスタートしている。

基本的な発想は、米国などと同じく「官から民へ」というもの。

官が中心だと、国民の税金を使うということで失敗が許されにくい。

どうしても慎重になり、スピード感に欠ける。

これに対して、民の力を上手く使うことで、スピード感ある開発が行えるのではないかという考え方である。

「宇宙戦略基金」のもう一つのポイントは、JAXAに関する法律を改正して、この1兆円基金がJAXAに設置されたこと。

JAXAのこれまでの機能は、宇宙科学や宇宙航空に関する研究・開発、並びに人工衛星等の開発、打上げ、追跡及び 運用等の業務を行うことだったが、これに加えて基金がJAXAに設置され、JAXAが、民間・大学が行う研究開発に対して助成を行うようになる。

JAXAによる民間や大学に対する支援が、こうした宇宙ベンチャーに対する民間資金の呼び水となることが期待される。

更に、今後の方向性としては、米国のNASAが行ったように、JAXA自身が宇宙関連スタートアップの製品やサービスを積極的に購入するようになることも期待したい。

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