バフェットの「堀」とは
本日は、日経CNBCテレビ『日経ヴェリタストーク』に出演しました。
トピックは、バフェットの堀について。
ウォーレン・バフェットは幾度となく「堀」について話したり書いたりしてきています。
たとえば、2008年2月、株主への手紙では、
A truly great business must have an enduring “moat” that protects excellent returns on invested capital.
(真に優れたビジネスには、投下資本に対する優れたリターンを守る永続的な「堀」がなければならない)
と記しています。
彼の言う moat (モート)とは城の周りの「お堀」を意味する言葉ですが、例えば「強力なブランド力」は、鉄壁な「堀」として機能します。
アメリカン・エクスプレスやコカ・コーラなどが良い例でしょう。
競合相手は堀を超えて、城に進出してくることが容易には出来ません。
もう少し別の角度から説明しましょう。
ウォーレン・バフェットは、長い年月にわたってキャッシュフローを出し続ける会社の株を、長期に亘って保有し続けることで、世界一位の投資家の地位を築いてきました。
その際に役立ったのが、moat を持つ会社への投資です。
例えばアメリカン・エクスプレスについては、彼は1964年にこの株を買って、60年間、ずっと保有し続けています。
コカ・コーラは1988年に買って、36年間、持ち続けています。
どちらの会社も圧倒的なブランド力を持っていて、バフェットはこれを moat という言葉で表したのでした。
よく誤解されるのですが、たんに現在の世界シェアが高いだけでは、moat を持っていることにはなりません。
10年後、20年後もその高いシェアを維持できるかがポイントです。
そういった会社は日本にあるのでしょうか。
あります。たとえば、ファスナーのYKK。
非上場の会社ですが、YKKのブランド力は圧倒的です。
高級スーツを着込んで重要な商談に臨んだとしても、ファスナーが壊れたりすると一瞬にして台無しになってしまいます。
ファスナーに必要なのは、絶対的な信頼性。
こうしたことからYKKのファスナーが使われるようになってきたのですが、現在、国内シェア95%、世界シェア50%。
この会社が持つ moat は、簡単には浸食できません。
なお moat について、もっと勉強してみたいという方にお勧めなのが、パット・ドーシーが書いた『千年投資の公理』。
その中で、『小さな池の大きな魚でいる方が、大きな池の小さな魚よりずっといい』という一節があります。
これは、グローバルニッチトップ企業という概念に繋がりますが、例えば自動車のワイパーのゴムを製造しているフコク(本社:埼玉県)。
国内自動車メーカーのワイパーの90%がフコク製。
世界のOEMシェアでも40%以上を占めていると言われています。
YKKと同じように一見したところでは、簡単な製品のようですが、圧倒的な技術力がその裏にあります。
海外でレンタカーをした時などに、雨が降ってワイパーを作動させると、時として、ガラスを擦るような音をたてたり、きちんと雨水が拭き取り切れなかったりすることがあります。
しかしフコクのワイパーは、音をたてず、滑るように、なめらかに作動して、しかもきちんと雨水だけをふき取ってくれます。
グローバルニッチトップ企業という視点も投資を考える上で面白いかもしれません。
なお本日の日経ヴェリタストークですが、 10日(水曜) 12:10~と、21:00~の2回に亘って再放送されます。
また『こちら』のVOD(ビデオ・オン・デマンド)でもご覧になれます。
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