話している間にも・・
本日は、日経CNBCテレビ『日経ヴェリタストーク』に出演しました。
また本日はマーケットが著しく下落する歴史的な一日でもありました。
番組は生放送で、画面の下に相場のテロップが流れるのですが、番組内で話している間も、相場下落の数字が目に入ってくる・・そんな状況でした。
もっとも番組のトピックスは、急落するマーケットの話ではなくて、(日経ヴェリタス新聞の特集記事に合わせる形で)利上げの中でも注目出来る銘柄を探るというものでした。
以下、キャスターの曾根さんからの質問と私のコメントです。
【1】先日の日銀の決定について、どう思うか
それまで為替が結構、円安になっていたので、日銀としては動かざるをえなかった。
9月まで待つと自民党の総裁選挙もあるので、7月末のこの段階でと考えたのだろう。
しかし、いま起きていることがもし見通せたとしたら、やらなかったと思う。
利上げ発表後の記者会見で総裁の発言がかなりタカ派的と受け止められたこともあって、よけいに市場が神経質なったということもあると思う。
いずれにせよ、今の状況からして、更なる追加利上げは当面は考えにくいと思う。
【2】利払い増加による企業業績への影響をどう見るか
大企業はそれほどは影響を受けないと思うが、中小企業にとっては利払い増加はひじょうに厳しい。
もう一つは、個人。
現在の日本で勤労者世帯の42%が住宅ローンを抱えている。
変動金利で借りている世帯も多く、この人たちが経済的に苦しくなる可能性があり、個人消費が弱くなる懸念がある。
そうすれば、企業業績にも跳ね返ってくる可能性がある。
【3】銀行株は足元では大幅安だが、どう選別していけばいいか
今までは超低金利で、伝統的な貸出業務では、なかなか利ザヤが得られなかった。
それが一転、利上げにより、金利がきちんと付いてくるようになると、こうした状況が是正され、銀行にとってフォローの風が吹いてくるようにも見える。
ただ今まで超低金利下で銀行がどうしていたかというと、集めた預金を(貸出しは難しいからと言って)国債や外債に投資してきた面もある。
こうした有価証券投資に関しては金利が上昇してくると評価損の問題が生じてくる。
米国のシリコンバレー銀行は、これが原因で破綻したし、農林中央金庫は1兆7000億円の有価証券評価損を抱えるようになった。
日本の地銀でも、有価証券の評価損や売却損で、赤字に転落するところが出て来ている。
【4】日銀による利上げの背景には個人所得の増加などがあった。小売りなど個人消費関連についてどう見るか
経営の現場では値上げについては一般的に、もの凄い神経質で、恐るおそるやっているのが実情。
お客さんは値段に敏感なので、価格で競争相手に負けると、客は競合に行ってしまう。
そういった意味で小売業にとっては、価格競争力が一番大事だが、それ以外の点では、如何にしてテクノロジーを取り入れて顧客の利便性を高めるかがポイントになってきている。
たとえば、これまでのセルフレジは、お店にとっては人員削減のメリットがあったが、顧客にはメリットが無かった。
それをトライアルのスマートカート(Skip Cart)や、イオンのレジゴーでは、
顧客が商品をショッピングカートに入れるときにスキャンさせ、レジ待ちの時間を解消させた(トライアルではそもそもレジに立ち寄る必要が無くなった)。
買い物しながら途中で合計金額を確認することもできる。
スキャンしないままカートのカゴに入れるとそれを検知して注意を促す仕組みもある。
トライアルではこのカートを他のスーパーなどに外販しているという。
【5】不動産についてはどう見るか
一般論としては、金利が上がれば、不動産価格は下落する方向に働き、金利上昇は、不動産会社にとってはアゲンストな風となる。
米国ではFRBが金利を上げた結果、米国の商業用不動産が下落、商業用不動産全体で21%、オフィス用不動産に限ると37%もピーク時に比して下落してきている。
【6】株価は、今はこのように急落してるが、ここから先をどう見るか
日本はどうしても米国の状況の影響を受ける。
米国の市場が回復してこないと、日本のマーケットは厳しいかもしれない。
先週1週間は、米国の市場では景気関連指標が軒並み悪い数字が続いて、金曜日の雇用統計でトドメを刺したといった状況。
1週間の間に、米国の2年債利回りは52 bpも低下。10年債も40 bp低下。これは2008年以降、最大の下げ幅。
債券市場のこうした状況(利回り低下、価格急騰)が株式市場にも影響した。
こうした状況はしばらく続くかもしれない。