オフィスREIT 秋晴れ
本日は日経CNBCテレビ『日経ヴェリタストーク』に出演しました。
テーマはオフィスREITについて。
以下、キャスターの曽根さんからの質問とそれに対する私の答えです(頭に残っている記憶に従って書いたものです。詳しくは『こちら』をご覧ください)。
【1】オフィスビルの需要と供給について
まず供給面では、もともと2023年問題ということが言われてきた。
これは2023年に虎の門ヒルズ・ステーションタワー、麻布台ヒルズなどが開業。
この年の大規模オフィスビルの供給量が138万平方メートルとなることが予見されていたことだ。
その前の2年間、つまり2021年、22年がいずれも50万平方メートル前後だったことから、138万平方メートルというのが如何に大きな数字だったかが分かる。
なお24年の供給はまた65万平方メートルくらいに戻ると予想されている。
このように23年は供給過多が懸念されていたが、蓋を開けてみれば、何とか無事に乗り切ることができた。
この裏には需要面の事情、つまりコロナ禍が一段落し、オフィス回帰のニーズが高まったこと、また少しでも快適なオフィスに移りたい(会社サイドとしても快適なオフィスで優秀な人材を獲得したい)といったニーズが増えたことが影響している。
【2】東証プライムの予想配当利回りよりもREITの予想分配金利回りの方が高い
これは当然のことであって、REITには法人税がかからない。
ただし条件があって、配当可能利益の90%超を投資家に分配する必要がある。
したがってある意味、必然的に、REITの予想分配金利回りは、株式の予想配当利回りを上回る。
ただし、投資家にとって重要なのは、分配金なり配当の受取額と、REIT価格なり株価の騰落率とを加味した『トータル・リターン』である。
つまりREITの場合は、『分配金 + REIT価格の上昇』
株の場合は、『配当金 + 株価の上昇』
といったトータル・リターンで比較する。
すると、2010年から2023年の間はREITの方が、成績が良かったが、2023年以降はTOPIXの方が、トータル・リターンが高くなっている。
一般論でいえば、株とREITで比較すると、キャピタル・ゲインを重視するなら株、分配金・配当金重視ならREITと言えるかもしれない。
ただし、REITのマーケットは株式の市場に比べると非常に小さい。
REIT全体で時価総額は15兆円もない。トヨタ43兆円の3分の1だ。
よって、その分ボラティリティが高くなる傾向があるかもしれない。
【3】具体的にどのREITを選べばよいか
ピンポイントで「このREITに投資する」と選ぶのは、個人投資家にとって難しいかもしれない。
200頁前後ある有証を読み込んで、各REITが持っている個別物件の特性、賃料収入動向を把握していくのは根気のいる作業だ。
REITに関心ある投資家は、最初はREIT市場全体に投資することを考えてみてはどうだろうか。
東証REIT指数の値動きに連動するETFが、全部で6本ある。
6本の中で、信託報酬や各々の純資産総額を比較して、選ぶと良いだろう。
もっとお勧めなのは、トータル・リターン、すなわち『配当込みの東証REIT指数』に着目したETFで、全部で4本ある。
また例えば、倉庫など物流に着目したREITに投資したい、ということであれば、配当込み東証REIT物流フォーカス指数のETFがある。
もちろん個別のREITに当たることも可能だが、その場合は、有価証券報告書で、どういった物件を持っているREITなのかを、よく調べてみることだ。
なおREITにおいては、スポンサーが重要な役割を果たすが、REITとスポンサーとの間、あるいはREITと運用会社の間では、利益相反の問題も発生しかねない。
ほとんどのREITでは、コンプライアンスの体制がしっかり取られていて、問題ないと言えるが、
2年前には、あるREITの資産運用会社が金融庁から業務停止命令を受けた。
そういった問題が起きないかどうか、有証でよくチェックする必要がある。
【4】金利動向とREITへの影響
金利が上昇すれば、株式にとってもREITにとってもマイナス要因となる。
その金利だが、米国の景気が思った以上に好調で、利下げが遠のいている。
結果、日米の金利差がなかなか縮まらず、円安に振れてきている。
こうした中で、為替がさらに円安に振れる事態になると、日銀としては米国金利の低下を待つといったスタンスはもはや取れない。
つまり自分から積極的に金利を上げて、日米金利差の縮小に向けて動かざるを得ない。
ただし金利を上げると言っても、日本の場合、限界がある。
金利が上がり過ぎると、政府の財政コストは増加してしまうし、日銀が債務超過に陥るリスクも出てくる。
【5】REITに関して個人投資家へのアドバイス
REITに関してのよくある誤解を2つ挙げる。
1つは、都心の地価が著しく上昇していて、パワーカップルと称される人たちでも都心部でマンションを持つのが難しくなってきている。
この地価上昇の恩恵をなんとか受けたいとの思惑で、REITに手を出す人が多い。
しかしREITは基本的に賃料収入を得て、分配金を投資家に渡す金融商品なので、REITに投資したからと言って、地価上昇の恩恵を直接的な形で得ることは出来ない。
もう一つの誤解は、実際にREITに投資した人で多かったケースなのだが、『東京オリンピックまでは東京の地価は上がりますよ』と証券会社の人に言われて、REITを買ってしまったケース。
2020年に予定されていたオリンピックの前に、新型コロナウイルスが世界を襲い、人々がオフィスに出社しなくなったり、ホテルを利用しなくなったりして、REITが拠って立つところの賃料収入の見込みが減少して、REIT価格が下落。
多くの投資家が傷ついた。
これらの誤解は、何れもREITの商品特性をよく理解していないところからきている。
繰り返すが、投資ポートフォリオ分散の一環として、REITを組み入れるのであれば、REIT全体を投資対象とするETFなどを考えてみる。
それと『分配金+REIT価格』の上昇というトータル・リターンを考えてみる。
なお『損をした』と言っている人でも、トータル・リターンで見ると、実際にはリターンを上げていたというケースもある。


