日経ヴェリタス(紙版)最終号と「青い壺」
もう10年以上も前のことですが、日経ヴェリタス編集長(当時)からお昼をご馳走になり、その席でヴェリタス紙への寄稿を求められました。
そこで始めた連載が「Money Never Sleeps」。
14年12月の第1回から17年6月まで、19回にわたって、金融の世界で私が出会った人たちを中心に記事を書きました。
アベノミックスが始まると耳にして、突然来日して面会を求めてきたアフガニスタンの富豪とか、
キプロス島に来ないかと誘ってきたロシア人のヘッジファンド創始者などの話です。
20年3月からは「投資力を磨こう」とのテーマで、51回にわたって連載を続けました。
そんな日経ヴェリタスも紙版は今日が最終号です。
すでに電子版がスタートしていますので、私の連載記事もこれからは電子版の方に引き継がれます。
ということで、「たまたま」なのですが、栄えある(?)最終号に私の寄稿記事が載りました。
題して、『「青い壺」で読む、支配されない運用』。
「青い壺」は有吉佐和子によって半世紀近くも前に書かれた小説ですが、「定年、相続、お金」といった現代にも通用する話が綴られています。
13の短い話で構成されているのですが、第2話では、デパートで壺を買い求めることになる定年退職後の夫と妻の話が出てきます。
夫、寅三68歳と、妻、千枝。
千枝は若い頃は、舅と姑に叱られ、それでも彼らに尽くし、やがては順を追って見送りました。
やっとのことで老後は寅三と二人きりの静かな暮しができると思っていたのですが、実際は違っていました。
「寅三が会社をやめて半年たつと、千枝は遂に音をあげてしまった。夫がくる日もくる日も毎日家にいるという生活は、千枝が結婚して以来、初めての経験であったし、おまけに寅三は家の中ではガスに火ひとつ点けることもできないほどの役立たずなのである」。
こんな魅力ない男と、よくも五十年連れそって来たものだと、千枝は嘆きます。
それでも夫妻は、連れ立ってデパートへ買い物に行きます。
寅三が会社で世話になった上司への贈答品を求めるためです。
そして買い求めた青い壺を持って、寅三は久しぶりに会社を訪れるのでした。
しかし、問題はその後です。
上司だった副社長に壺を届けた後、寅三は会社の階段を下りて、以前いた自分の席に戻ってしまいます。
そして右手で印を取り、伝票をゆっくりめくりながら判を押し始めるのでした。
「印を取って、伝票に判を押す」というあたりは、まさに昭和の小説であり、現在ならば「端末のキーを押す」となるのでしょうか・・。
なお今回の寄稿文は、日経ヴェリタスの電子版にも掲載されています。
『こちら』です。



