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2025年5月30日 (金)

SMR

人工知能が広く使われるようになると、これを動かす膨大な電力が必要になります。

データセンターの消費電力は2030年までに現在の2倍以上に膨らむとの試算もあります(『こちら』)。

そこで注目されているのが、SMR(『こちら』)と呼ばれる小型モジュール型原子炉。

たとえばカイロス・パワー(Kairos Power)の小型モジュール式原子炉は、従来の水冷式原子炉とは異なり、溶融フッ化物塩を冷却材として使用することで、安全性が格段に高まるとしています。 

(溶融フッ化物塩については『こちら』の山脇道夫教授の資料~経産省第13回 高速炉開発会議 戦略ワーキンググループ~が参考になります)。

昨年10月のTechCrunch(『こちら』)によると、グーグルはカイロスとの間で7基のSMR建設に関する契約を締結。

これにより2030年を目途に500メガワットの電力供給を得るとしています。

以下の概念図はカイロスのウェブサイト(『こちら』)から。

Photo_20250530155701

どうしたら安全性の高い原子炉を作れるのか。

カイロスのアプローチは、今までのような水による冷却ではなく、溶融フッ化物塩を使用するというものです。

これに対して、別のアプローチを考えるところもあります。

たとえば掘削によって直径76センチほどの穴(ボーリング孔)を地中深く(1.6キロ)まで開けて、この穴の中に原子炉を埋め込むというアイデア。

これは、Deep Fission という会社が進めており、4年後(2029年)には1号機を完成させるとしています(『こちら』) 。

いずれにせよAIが本格的に使われるようになると、膨大な電力需要が発生します。

これにどう対応するかは既に喫緊の課題と言えます。

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2025年5月22日 (木)

長期投資の落とし穴

スタンフォードのビジネススクールは2年制で、1年度を終えて、2年生になる前の夏休みに学生たちはサマージョブと呼ばれる仕事に就く。

6月下旬から9月下旬までの3ヶ月間、学生たちはコンサルティング会社や投資銀行などで就業経験を積むのだ。

卒業後、サマージョブで働いた会社に就職するケースも多い。

Stanford-2011

80年9月、私より1年下の学年が2年生になった時、スティーブの姿がなかった。

「スティーブがドロップアウトしたと聞いたが本当か」

クラスメートたちの間で話題になった。

成績が芳しくなくて中退する学生は毎年何人かいるが、スティーブはトップクラスの成績を収めていたらしい。

「スティーブはサマージョブで親友が始めたソフトウェアのスタートアップ会社に行き、そのまま残ることにしたらしい。

あと9ヶ月学校に通えば、引く手あまたで大手に就職できたのにもったいない」

クラスメートたちはこんな会話を交わしたという。

さて・・

『日経ヴェリタス』に寄稿しました。

続きは『こちら』で。

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2025年5月19日 (月)

霧中の企業業績

本日は、日経CNBCテレビ『日経ヴェリタストーク』に出演しました(『こちら』)。

トピックスは『霧中の企業業績』。

時間の関係で、番組内でお話することができなかった点を中心に以下を記します。

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【1】個人投資家としてどこに資金を向ければよいか

(質問)ムーディーズによる米国債格下げなど、いろいろな動きが出てきている。先行きが不透明な中で、資金をどこに向ければ良いか迷っている個人投資家の方も多いと思う。

(答え)個人投資家の方はS&P500やオルカン(オールカントリーズ)に資金を入れているケースが多いと思う(『こちら』)。

これをいま敢えて変更する必要性はとくにないように思う。以下、詳しく説明したい。

【2】いま米国で起きていることは急に起きたことか

米国の双子の赤字、貿易赤字と財政赤字は未来永劫的に継続できない。

米国の貿易赤字は、GDP比4%であり、これはいわば米国が他国から借金をして他国のモノを買っているようなこと。

一方、米国政府の財政赤字はGDP比7%に迫る。

スコット・ベセント財務長官によると、2年前トランプ氏に呼ばれてフロリダの私邸(Mar-a-Lago)を訪れた際に、

トランプ氏から「リセッション(景気後退)にならないように気をつけながら、どうやって財政赤字の問題を解決するんだ?」

と聞かれたという。

詳しくは『こちら』の動画の22分45秒あたりをご覧いただきたいが、

トランプ氏は大統領になる前から、財政赤字と貿易赤字はともに持続不可能と考えており、放置すれば、もっと大きな問題に発展する可能性が高いと認識していた。

そして経済を後退させることなく、この問題を退治したいとの強い意向を持っており、彼のこの質問に対するべセント氏の答えに納得したからこそ、

大統領になった際に、べセント氏を財務長官に指名したのだろう。

この時のべセント氏の答えは上記動画に詳しいが、急激な変化は景気後退を誘発しかねない為、2028年をターゲットに財政赤字をGDP比7%から、3~3.5%にしたいと考えていることが分かる。

トランプ大統領やべセント財務長官の取り組みが成功するかどうか分からないが、このまま放置すれば財政赤字にしろ貿易赤字にしろ、unsustainable(持続不能)なのは明らかで、傷口が広がらないうちに、先送りせずに問題解決したいとの意向だ。

そのためには、ある程度の軋轢は生じようが、かと言って「景気後退は避けたい」とのスタンスは鮮明だ。

またべセント長官は上記だけでなくいろんなインタビューで述べているが、強いドルを望むとの立場。

しかしbilateral(二国間)の関係で、為替が貿易不均衡の要因になっているのであれば、その部分については是正が必要と考えている。

私は今でも鮮明に覚えているのだが、1981年にレーガン氏が大統領になった時、米国のインフレ率は約12%だった。この時、サプライサイド・エコノミックスの政策が取られ、これに対して多くの経済学者が反発、当時としてはかなり混乱した。

しかしその後インフレは収まり(83年1月3.7%)、株価もレーガン氏が大統領だった8年間で2倍以上になった。

今でもサプライサイド・エコノミックスは経済学的に間違いだとする説が多く、またインフレを退治したのは、ポール・ボルカ―氏(当時のFRB議長)だと主張する人も多いが、いずれにせよ1974年から続いていた高いインフレはレーガン大統領の時代に収まった。

当時と今回では情勢も全く違い、デジャブ(déjà-vu)であると考えている訳ではないが、米政権が考えていることを頭ごなしに否定するのではなく、これを理解しようとする姿勢は重要であるように思う。

【3】FRBパウエル議長とべセント財務長官の関係

トランプ大統領がパウエル氏に圧力をかけているといった情報が伝わり、FRB(パウエル氏)とべセント財務長官との関係はどうなんだろうと疑問に思う向きもあるかもしれない。

しかし『こちら』のインタビューからも明らかなように(注:12分53秒あたり)、パウエル議長とべセント長官は、毎週1回は必ず朝食を共にしていろんな問題を協議するという。

インタビュー動画では、べセント氏のこの発言を受けて、インタビュアーのAnnmarie Hordern氏がすかさず『それでは先週も朝食を共にしたのですね』と畳み込んだ。

この辺のやり取りはさすが・・。

これに対して、べセント氏は『もちろんです。先週は away game だったので、私がFRBを訪れました』と回答。

政権としてFRBと緊密に連絡を取り合っていることをアピールしていた。

* * *

(追加)

【4】バフェット氏の引退

なお本日の番組の最後に、突然バフェット氏引退の話が出て来て、ほとんど時間がなくて答えられなかったのだが、先週WSJ(ウォールストリートジャーナル紙)がCEO退任(今年中に退任)表明後のバフェット氏にインタビューした時のことに触れた(『こちら』)。

バフェット氏いわく:

『今年95歳になるが、90歳になった辺りから年齢を感じるようになった。

人の名前をよく「ど忘れ」するようになった。

グレッグ(注:後任CEOのグレッグ・アベル氏のこと)が10時間になしえることと、

私が10時間に出来ることとを比較すると明らかに違う。

こういった状況でCEOを務め続けるのはグレッグに対してフェアではないと考えた。

ただCEOは辞めるが、家にこもってソープオペラ(soap opera)を見る訳ではない。

投資の意思決定について年齢は関係ない。

人々が恐れる時、私は恐れない』

* * *

バフェット氏らしいコメント・・。

普通の人は60歳あたりから、時おり人の名前が出て来ないようになるだが・・。

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2025年5月 4日 (日)

ウォーレン・バフェット氏は総会で何を語ったか

【1】投資家の目で見た米国

(質問)かつて、あなたは「投資をする上では米国に生まれたことが追い風になり、resilience(困難を乗り越え回復する力)に恵まれた」と語ったが、今でもそう思うか。

(バフェット氏)米国に生まれることが出来るというのは、当時、たった3%の確率しかなかった。このチャンスをものにした日、つまり生まれた日こそが、私にとって人生で最も幸運な日だった。

歴史を振り返ると、米国はいろんなことを経験してきた。大恐慌、世界大戦、原子爆弾の開発などだ。

現在、いろんな問題が山積みされているからといって悲観的になることはない。

もし生まれてくるのが95年前でなくて現在だったとしても、私は米国人に生まれたことを幸運に思うだろう。

【2】関税の問題について

(バフェット氏)250年前、米国はタバコとコットン(綿花)を生産していて、それを他国と交換することによって成長してきた。

そのことを忘れて、75億人の人たちの犠牲のもとに3億人の米国人を優先するのは間違いだ。

貿易は戦争になり得る(Trade can be an act of war)。

しかし貿易を武器として使うべきではない(Trade should not be a weapon)。

米国以外の世界ももっと繫栄するようになれば、世界は安全になり、我々の子どもたちは安全と感じるようになる。

3億人を擁する国が成功したからといって、残り75億人に対して「こうしろ」と教え込むようなことはすべきではない。

【3】日本の商社株への投資

(バフェット氏)6年前だったか、日本の商社株への投資を始めた時、株価がとんでもなく安かった(ridiculously cheap)。

商社株は(後任の)グレッグ次第だが今後50年間売るつもりはない。

我々は商社株に $20 billionほど投資したが、ほんとうは $100 billion くらい入れたかった。

バークシャーは巨大になり過ぎてしまって、サイズが大きいことが我々にとって最大の敵となってしまった。

【4】安易に金を儲ける人たちについて

(バフェット氏)あなたの周りで、真っ当でないことが起きていたとしても、それに参加すべきではない。

借金をしてお金持ちになっている人がいたり、大したことのない証券に投資して金を儲けている人たちがいたとしても、彼らは将来傷つく可能性がある。

こうした人たちのことを気にせず、自分の道を行くべきだ。

【5】為替リスクについて

(バフェット氏)10年先、20年先のことを考えてバークシャーを経営してきた。

つまり今期の業績とか四半期の業績を考えたことは無く、為替のことも短期では気にしない。

日本の商社に投資しているが、日本円が地獄(hell)に落ちるように落下していくと考えるのであれば、最初から日本に投資などしない。

心配なのはむしろ米国かもしれず、これは世界共通のことなのだが、政府というのは、どこも「お金を使いすぎる」ことが多い。

その結果、通貨は弱体化する傾向にある。

財政赤字とか通貨の価値というのは一般的に言って scary things(怖いもの)だ。

【6】自動運転が普及することの影響

(Ajit Jain氏)自動運転車の普及によってバークシャー傘下 GEICO の自動車保険ビジネスは大きく変わるだろう。

自動運転車は人間が運転するよりも事故率が圧倒的に低い。

事故数は減るが、1件の事故当たりの修理代は増えるだろう。

今後は製造物責任保険が重要なビジネスになるかもしれない。

【7】アップル株投資と自社株買い

(バフェット氏)税法の改正により、自社株買いをすると1%の税金を取られるようになった。

これによりバークシャーによる自社株買いはコスト高になったが、もっと気の毒なのはアップルだ。

アップルは年に1000億ドルの自社株買いをしているが、これに1%の税金がかかるので、年10億ドルのコスト(税金支払い)になる。

負担しているのはアップルの株主であり、バークシャーもアップルの株主だ。

更に付け加えると、この1%の税金を増やしたいという動きも出てきている。

【8】最近の株式市場の乱高下について

(バフェット氏)株式市場はもともとvolatile な(変動率が高い)ものだ。

私が生まれた時、ダウ平均株価は240だったが、2年後の1932年には41まで落ちた。8割以上の下落だ。

【9】DOGE(政府効率化省)について

(質問)DOGE(政府効率化省)についてどう思うか。

(バフェット氏)官僚主義というのは contagious なものだ(伝染する)。

これによってプライベート・セクター(民間分野)は窒息してしまう。

民間の会社は効率に経営することを考えていて、バークシャー傘下の保険会社 GEICO は、かつて5万人の従業員がいたが、3万人に減らした。

そこで浮いた資金を technology に投資した。

財政赤字を考えると、このままでは続かない。Sustainable(持続可能)ではないのだ。

どこかの時点で制御不能になってしまう(uncontrollable at some point)。

合衆国の歳入と歳出を見ると、現在7%のギャップがあるが、恐らくは3%のギャップが持続可能(sustainable)な水準のはずだ。

これを埋める仕事はたいへんで私個人はそんな仕事はしたくはないが、ギャップを埋めるのは必要なことだと思う。

通貨価値が堕落していく(debased)のは避けなければならない。

【10】バフェット氏の後任

(バフェット氏)明日の取締役会でグレッグ・エイブル氏を次期バークシャーの CEO(最高経営責任者)にするよう提案したい。

グレッグにはこのことを話したことは無く、彼はいまここで初めてこれを知ったはずだ。

取締役会が承認すれば年末にはグレッグが CEO になる。

「政府が困難な状況に陥ったとき、バークシャーは liabilities(重荷、障害)であるよりも、assets(強み)である」との評価を受けてきた。

そういった意味で、これから先も私がグレッグの助けになる局面が出てくるかもしれない。

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