メタ、AI事業の現在地(その3)
(続きです)
AIの賢さを高めるうえでは、単調で地道なラベル付け作業が欠かせません。
スケールAIは、こうした単純なラベリング業務をアフリカや南アジアなどの労働者を安価に雇って行わせてきました。
なお単純なラベリング業務の実態については、NHKが『BS世界のドキュメンタリー』で『AIの不都合な真実』と題して報道したこともあります(『こちら』)。
スケールAIが行うのは、単純なラベリング業務だけではありません。
AIが進化するにつれて、より高度で専門的なトレーナー業務も必要となります。
これには先進国の大学院生やエンジニアたちが当たってきました。
彼らの時給は比較的高く、日本の場合で約4600円の例が報道されています。
彼らはアルバイトとして雇われ、すき間時間を使ってトレーナー業務に従事します。
こうしてスケールAIは、マイクロソフトやオープンAI、トヨタ自動車などの顧客企業に対して、ラベル付けやAIトレーナー業務を提供してきました。
そしてAIインフラの中核を担う存在として評価されてきました。
スケールAI社は、22年5月の段階で未公開企業としての評価額が70億ドルに到達。
ワン氏は25歳にして「ビリオネア」(資産10億ドル以上)になったと報じられました。
そして25年6月、メタは約2兆円を投じてスケールAIの株式49%を取得しました。
このディールによって、ワン氏はスケールAIのCEO(最高経営責任者)職を配下のジェイソン・ドロージ氏に譲ります。
そして、自らは「スケールAI社」の取締役に退きつつ、「メタ社」のチーフAIオフィサーに就任したのです。
これまで(5月末まで)メタのAI開発を率いてきたピノー氏は、査読付き論文200本以上を発表してきた世界的なAI研究者です。
対するワン氏は、ラベリングを中心とするAIインフラ分野で実績を上げてきた起業家。
メタのCEO、ザッカーバーグ氏としては、AI事業のテコ入れを図る上では、学者ではなく、起業家としての突破力と実行力が必要だと考えたのでしょう。
2兆円を投じたメタの「大胆な一手」は、はたして成功を収めるのでしょうか。
株式市場はまだその行方を見定めている段階です。



