「記憶の価値」を意味するキオクシアの躍進
日本企業の時価総額ランキングで、1位トヨタ、2位三菱UFJ、3位ソフトバンクグループに次ぐ、堂々の第4位にまで急浮上した企業があります。
それが「キオクシア(Kioxia)」です。
この特徴的な社名は、日本語の「記憶(kioku)」と、ギリシャ語で価値を意味する「axia(アクシア)」を組み合わせた造語です。
◆苦難の時代から「1年半で株価31倍」への大逆転
同社の前身は「東芝メモリ株式会社」です。
親会社であった東芝の経営危機に際して分社化され、2018年に米投資ファンド「ベインキャピタル」を中心とする日米韓企業連合(Pangea)に全株式が売却されました。
このとき、東芝自身も40.2%の出資比率で再出資を行っています。
その後、2024年12月に東京証券取引所へ上場を果たしました。
当時の初値は1,440円でしたが、先週末の株価はなんと44,450円。
上場からわずか1年半ほどで、株価は約31倍にまで大化けしたことになります。
なお、大株主であるベインキャピタルや東芝は、キオクシア株を段階的に市場で売却してきており、直近の東芝の出資比率は18.52%にまで縮小しています。
しかし、キオクシアの時価総額自体が桁違いに膨れ上がったため、東芝にとっては保有株の価値が高まり、自社の財務改善を加速させる原動力となっています。
◆「HBM(短期記憶)ばかりが注目されたAI市場で、ついにスポットライトが当たったNAND(長期記憶)」
現在、AI普及のゲームチェンジャーとなっているのは、エヌビディア(NVIDIA)などが手掛けるGPU(画像処理半導体)ですが、それとセットで動く「メモリ」の重要性も日増しに高まっています。
メモリには、超高速でデータを処理する「短期記憶のDRAM」と、データを保存する「長期記憶のNAND」の2種類があり、キオクシアは後者のNAND型フラッシュメモリの専業メーカーです。
もともとAI分野では、DRAMチップを垂直に積み上げた「HBM(高帯域幅メモリ)」ばかりが注目を浴びていました。
しかし、処理すべきデータ量が爆発的に増加した結果、昨年秋頃から、NANDを組み合わせた大容量・超高速ストレージである「SSD(ソリッド・ステート・ドライブ)」の需要にも火がつきました。
AIデータセンター向けにキオクシアの製品が引っ張りだこになり、これが株価高騰の決定的な引き金となったのです。
◆世界のメガキャップ企業と肩を並べる存在へ
先週末に発表された決算数値は、市場を驚かせる驚異的なものでした。
第4四半期の売上収益1兆29億円に対し、営業利益は5,991億円。
営業利益率は驚異の59.7%に達し、前年同期比で1499.5%増益という異次元の数字を記録しています。
現在の時価総額24.27兆円は、米ドルに換算すると約1,520億ドル。
これは世界時価総額ランキングで130位前後に位置する規模であり、欧州の航空大手エアバスや、スイスの金融大手UBSグループといったグローバルメガキャップ企業とほぼ同格の市場価値を手に入れたことを意味します。
AIビジネスの変化は、「超スピード」で進んでいきます。
かつて東芝の屋台骨であり、荒波を乗り越えて独立したキオクシアが、この世界のスピードをどこまで乗りこなしていけるのか。
日本の半導体産業の未来を占う意味でも、同社の動向から目が離せません。
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