超高齢社会のエキスパート12人に聞いた 老いと向き合う生き方
大晦日を目前にしたある日、編者の相川さんから一冊の本が届いた。
『超高齢社会のエキスパート12人に聞いた 老いと向き合う生き方』――少し長いタイトルだが、正月休みはこの本を読んで過ごすことにした。
本書には、樋口恵子さん、上野千鶴子さん、和田秀樹さんなど、よく知られた論者が名を連ねている。その中で、私にとって最も「腹落ち」したのは、高齢者住宅などに詳しい濱田孝一さんの話(本書第5章)だった。
濱田さんは、高齢者問題の核心をこう言い切る。
「(問題の本質は)85歳以上の高齢者が増えることなんです」。
なぜ85歳以上がポイントなのか。
実は、75〜84歳では要介護者は全体のわずか13%にとどまるが、85歳以上になると46%にまで跳ね上がる(本書178頁)。
現在、85歳以上の人口は約696万人(『こちら』)。
それが2035年には1,000万人を超える見込みだという。
思い返せば、私の母も86歳までは一人暮らしを続けていた。しかし、その年に骨折をきっかけとして、介護付き老人ホームへの入所を余儀なくされた。2008年のことだ。
今日では多様な事業者が高齢者住宅市場に参入しているが、濱田さんの見方は厳しい。
「サービス付き高齢者向け住宅は、フロントに人がいて、簡単なお世話をするぐらいのものが中心。最期まで住み続けられるみたいなことをPRしているところが多いけれども、介護サービスは外部に頼むので、自宅に住んでいて、外部に介護を依頼するのと基本的には何ら変わらない」(本書180頁)。
さらに現在整備されている高齢者住宅の「8割ぐらいは自立した人や要支援者(岩崎注:要介護者ではない)向けの住宅」であり(本書181頁)、
「(実際に)介護が必要になった時にきちんと介護サービスが受けられる高齢者住宅は、実は全体の2割ぐらいしかない」という(本書181~182頁)。
2008年に母の入居先を探した際、私は多くの施設を回り、現場を見て、職員とも話を重ねた。その体験からしても、濱田さんの指摘は実感とぴたりと重なる。
そして、ここからが最も重要な点だ。
濱田さんはこう続ける。
「要介護者向けの住宅として必要なのは介護付き有料老人ホームなんです。ただ、介護付き有料老人ホームは、この数年で30%くらいしか増えていないんですよ。逆にサ高住は8.9倍ぐらいに増えている。住宅型有料老人ホームも、3倍から4倍ぐらいに増えている。だから、要介護高齢者に適した住宅ではなくて、適さない住宅ばかりを作ってきた」(本書185頁)。
2034年、――今から8年後、団塊の世代は全員が85歳以上になる。
テレビのワイドショーやCMで目にする「高齢者住宅」に、私たちは本当に身を委ねて大丈夫なのだろうか。
本書の出版社名は「ジャーナリストの魂出版」。その名には、事業者やCMスポンサーに忖度せず、現実をありのまま伝えたいという覚悟が込められている――読み終えて、そんな思いが残った。
なお本書は1月15日に発売予定で、紀伊國屋新宿本店やジュンク堂書店池袋本店、アマゾンなどで販売されるという。
(注)キンドル版はすでにご覧になれます(『こちら』)。













