2022年8月19日 (金)

ドキュメンタリー映画『ウォーレン・バフェット氏になる』

2017年1月にHBOから配信されたドキュメンタリー映画、『ウォーレン・バフェット氏になる』

アマゾン・プライムの『こちら』でご覧になれます(1時間28分)。

映画を観たからと言って、バフェットになれる訳でもなく、観た人の投資にそれほど役に立つわけでもありません(もちろん役に立つ金言は出てきますが・・)。

映画が撮影されたのは2016年。

ウォーレン・バフェットが86歳の時です(彼は今月末で92歳になります)。

毎朝、ネブラスカ州オマハ市の自宅から自分でクルマを運転してオフィスに出勤するバフェット。

彼は54年間、毎日、これをやり続けていると言います(注:新型コロナが猛威をふるっていた時は自宅で仕事をしていたそうです)。

映画が撮影された86歳の時、バフェットが保有する個人資産は673億ドル(1ドル130円換算で8兆7000億円)。

にもかかわらず彼が住む家は特段の豪邸でもなく、普通の家で、オフィスも普通(オフィスは人と人がすれ違えないほど廊下が狭い)。

運転するクルマもベンツやレクサスではなく、普通のアメ車(GM車、まぁ一応キャデラックでしたが・・)。

もちろん運転手が別にいる訳でもなく自分で運転。

オフィスに着いて、誰かが出迎えてくれる訳でもありません。

日本では年収1億円以上の報酬を得ている上場企業役員が652人いると言いますが、

恐らくは、その多くは毎朝運転手が自宅に迎えにきてくれて、

会社まで送っていってもらうという生活をしているかと思います。

さて、バフェットですが、

毎朝、自宅から会社へ向かう途中、地元のマクドナルドに寄ります。

そしてマックのドライブスルーで朝食を注文。

日によって選ぶメニューが違い、2ドル61セントだったり、2ドル95セントだったり、3ドル17セントだったりするのだとか。

これを袋に入れてもらって、オフィスに持ち込み、自分の席でマックの朝食を食べます。

現在、時価総額6,700億ドル(87兆円)、世界第7位のバークシャー・ハサウェイ社には、昔も今も25人のスタッフしかいない(オフィスで働いている人数)と言います。

広報部や人事部などなく、コミティ―(委員会)という名の組織も一切ない。

「形式的なものは肌に合わないんだ」とバッフェト。

映画は、地元の高校生のクラスに招かれ、そこでのバフェットによるスピーチを軸に進められていきますが、バフェットが住む家、働くオフィス、そして家族や会社の仲間を見ることが出来て、興味深いものでした。

13歳の時にすでに所得税の確定申告をしていたというウォーレン・バフェット。

やはり常人ではありません。

映画を観終わっての感想ですが、バフェットにとっては、投資こそが、もっともフェア(公平)な戦いの場であったのだと思います。

そして彼はその戦いを見事に勝ち抜いてきたのでした。

金額の多寡、プロアマを問わず、少しでも株式投資の世界に触れている人には一見に値する映画だと思いました。

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2022年7月10日 (日)

みずほの20年

日経の金融部長、河浪さんが書いた『みずほ、迷走の20年』を読みました。

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私自身、興銀を離れてから24年が経っており、みずほの設立(02年4月)も、3行経営統合合意の発表(99年8月)も知りません。(退職したのは、それより前の98年11月)。

そういった意味で、完全な部外者である私が、一読者として、本書を読んだだけなのですが、印象に残った箇所を一つ、二つ。

著者による80年代の記述で、

『日本経済に必要だったのは、世界をリードする次世代産業を自らつくっていく「先端国家型の経済システム」だった。それには新ビジネスの成功と失敗を効率よく切り分ける市場機能が必要になる。銀行の判断に頼る間接金融ではなく、よりビジネスの自然淘汰を可能にする直接金融が適切だ』(本書212-13頁)。

これは賛否両論ある記述だとは思いますが、たしかに市場機能をもう少し上手く利用できていれば、失われた20年とか30年は防ぎ得たような気もします。

バブル期、日本企業は大量にワラント債やCBを発行。

ほとんどゼロ金利で調達した資金を財テクでの運用に回しました。

しかし、そこには「資本コスト」や「希薄化」の視点が欠落していました。

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本来、銀行はそうした企業行動に対して助言できる立場にあった訳ですが、

企業価値を極大化するための助言がきちんと出来ていたのかどうか。

そもそも銀行自らが、「銀行自身にとっての企業価値極大化とは何か」を把握しきれていなかったのではないか。

以下、再び本書からの引用。

『85年のプラザ合意以降、・・銀行は間接金融のシステムを温存したまま、これまでの産業金融から不動産金融へと突き進む』(213頁)。

* * * *

ところで書棚を整理していたら興銀を辞めた時の辞令が出てきました。

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発令日が11月29日となっているのは、(はっきりとは覚えていませんが、たしか)

「健康保険か厚生年金か雇用保険か、何らかの理由で、月末日を異動先の企業の入社日とした方が良い」。

そんな説明を当時の興銀人事部から受けた気がします。

辞めていく人に対して、そんな気配りをしてくれる組織でした。

今から24年前。

当時、私は45歳でした。

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2022年5月27日 (金)

些細なエピソードが面白い

ソニーの平井さん(前CEO)が書いた『ソニー再生』

1年ほど前の本なのですが、些細なエピソードが面白く読めます。

   Sony

彼が社長になった後で、海外に出張した時の話なのですが、以下、本書173~4頁より。

ホテルの部屋に入るとソニーのテレビが置いてあった。

でも何かがおかしい。

テレビの裏側を見るとホコリがまったくない。

室内の他のものと比べて配線が明らかに新しいことも気になった。

「もしかして・・・」

ホテルを手配してくれた現地のスタッフに聞くと案の定だった。

東京から本社の役員が来るときは部屋のテレビをソニー製に取り換えているのだという。

「なんでそんなことをするかなぁ・・・」

とため息をつきながらテレビを眺めたのを覚えている。

これはなにも現地のスタッフが悪いわけではない。

今まではそれが当然だったのだろう。

だから、いちいちこちらの意図を説明して改善してもらった。』

ソニーの株価は2000年3月には16,950円をつけました(分割調整後)。

それが2012年11月には772円にまで下落。

▲95%もの下落です。

その後、右肩上がりになって、今年の1月には15,725円にまで回復。

約10年で20倍になりました。

現在11,425円ですが、この水準でも当時の15倍になります。

平井さんは如何にしてソニーを再生させたのか・・。

その秘密が本書に書かれています。

成功した経営者の本は往々にして日経新聞「私の履歴書」のように自画自賛ものが多いのですが、

不思議とそういったものを感じさせない本でした。

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2022年4月10日 (日)

永野裕之著『教養としての「数学 I・A」』(読後感想文)

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「なんだ、数学 I・A か。高校時代には数IIIまでやったし・・」と、なめてかかると痛い目に遭います。

本書は、公園のベンチで春の日差しを浴びながら楽しむたぐいの本ではありません。

もちろん個人差はあるのでしょうが、少なくとも私の場合はそうでした。

きちんと机に向かって、ボールペンと紙を横に置きながら、

一つひとつ数式や図形を書いて確認しながら読み進む・・。

そんな感じの本です。

たとえば、冒頭(に近い方で)いきなり出てくるのが、

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これ自体は大したことのない数式なのですが、さて、この証明ってどうやるのだったでしょうか。

単純に式を解きほぐすと左側から右へと結果が得られます。

それだけでは、how to に基づいて右側を算出しているだけ・・。

図刑を使って証明してみると、ちょっと難しい・・(本書に説明が出てきます)。

続いて出てくるのが因数分解、三角比などなど・・・。

本書の最後の方では、正多面体がこの世には5種類しか存在しないことの証明や、オイラーの多面体定理の話も出てきます。

私は標準偏差や正規分布の本は別途読んでいるので、

このあたりの説明(第5章)はスーッと頭に入ってきました。

著者の説明の仕方が上手いこともあって、「公園のベンチの読書」でも平気でした。

しかし社会人として日ごろ慣れ親しんでいない分野(つまり私の場合、本書全体の80%くらい)になると、話が違ってきます。

定理や公式の導き方や証明をまさに食らいつくように、一つひとつ征服していき、1頁、1頁を進んでいく・・。

やや大袈裟ですが、私にとっては知的格闘技といった感じでした。

余談ですが、iPhone の電卓アプリを呼び出して、本体を横にすると、sin、cos、tan などの計算がすぐに出来ます。

10年以上 iPhone を使っていて(iPhone 4S から)このことに気づかず、本書で初めて知りました。

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2022年4月 1日 (金)

バフェットによる日本の商社株投資から分かること

バークシャー・ハザウェイのアニュアルレポート(『こちら』)を見ると、彼らは下記3社などの日本の商社株を有していることが分かります(アニュアルレポート7頁)。

三菱商事    2,102百万ドル(簿価ベース)

伊藤忠商事 2,099 百万ドル(簿価ベース)

三井物産  1,621百万ドル(簿価ベース)

一方で、円建て債を発行して円ベースの負債(残高 6,797百万ドル)も抱えています(アニュアルレポートK-99頁)。

バークシャーは上記以外にも日本の商社株を保有していると考えられますが、保有株として個別開示されるのはバークシャー全体の保有株のうち上位15社のみ。ちなみに最も多く持っているのはアップルの株式で31,089百万ドル。日本の上記商社勢は15社の中で、保有残高ベースで7~9番目に位置します。

いずれにせよバークシャーとしては円建ての資産(上記3社などの日本株)に見合う円建ての負債を敢えて抱えて、円ドルの為替のポジションをスクウェア(為替変動に中立的)に近いものにしていると思われます。

このように海外の投資家は、日本株の株価変動リスクが円ドルの為替リスクと混同されてしまうのを嫌います。

実例で見てましょう。

昨年末に日経平均を買った場合、28,791.71円(昨年末)が27,821.43円(3月末)となりましたので、▲3.4%のマイナスのリターンとなりました。

しかし例えば米国の投資家にとってみれば、バークシャーのような円建て負債を敢えて作らない場合には、

為替が115.02円(昨年末)から122.39円(3月末)に円安に進んでいますので(注:為替はTTM公示レート)、

ドルベースのリターンは、250.32ドル(=28,791.71円÷115.02円)から227.32ドル(=27,821.43円÷122.39円)へと、▲9.2%も下落してしまったことを意味します。

ちなみにこの間、ダウ平均株価は、36,338.30(昨年末)から34,678.35ドル(3月末)へと、▲4.6%の下落で済んでいます。

日本政府は海外にまで出かけて行って「Buy my Abenomics!」と外国人投資家に日本株への投資を呼び掛けてきました(『こちら』)。

しかし外国人投資家の立場からすると、たとえ日本株が値を上げても為替でやられてしまっては元の木阿弥。

つまり世界の投資家を呼び込むためには円安にならないことが重要なのです。

このことに四半世紀以上前に気がついたのは、1995年に米国財務長官に就任したロバート・ルービンでした。

彼はクリントン大統領(当時)に対して、こう助言したと言われています。

「大統領としていろいろとやりたいことがあるのでしょうが、歴史に名を残したいのなら、ドル高政策を進めることです」。

それまで米国では、安いドルが輸出を促進し、企業の競争力を高めると考えられていました。

しかし財務長官に就任する前の四半世紀をウォール街のゴールドマン・サックスで過ごしたルービンは、ドル高にすることで世界の資金を米国に集めることができると考えたのです。

輸出入といった「もの」の動きよりも、「お金」の動きに着目し、世界中から集まる資金をテコとして、米国の企業が積極果敢に投資を行い、経済を成長させていく・・。

ルービンはこうしたダイナミックな資本主義のモデルが成功すると信じていたのです。

* * *

この続きは日経新聞電子版でご覧ください(『こちら』)。

日曜日(4月3日)発売の日経ヴェリタス紙にも掲載されます。

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2022年3月12日 (土)

株主への手紙

米国企業のCEOがウェブサイトなどで発表している『株主への手紙』。

読み応えがあるものが多く、中には毎年の株主への手紙を集め、本にして出版されるものもあるほど。

たとえば昨年末に出版された『Invent & Wander──ジェフ・ベゾス Collected Writings』

この本の中心は、毎年発表されてきたジェフ・べゾスの株主への手紙を集めたもの。

『バフェットからの手紙』も基本はバフェットが毎年書いているバークシャーの株主への手紙。 

また、本にはなっていませんが、グーグルのラリー・ペイジの文章を読むのも私は好きです。

たとえば:

We did a lot of things that seemed crazy at the time. Many of those crazy things now have over a billion users, like Google Maps, YouTube, Chrome, and Android.

(我々はクレイジーだと思われたことをたくさんしてきた。そうしたたくさんのクレイジーだと思われたことが、今や10億人を超えるユーザーを持つようになっている。グーグル・マップや、ユーチューブ、クローム、アンドロイドなどだ)。

We’ve long believed that over time companies tend to get comfortable doing the same thing, just making incremental changes. 

(企業は長くやっていくうちに同じことをやったり、少しの改善・変化だけで満足してしまうようになる傾向にある)。

【注】以上の原文は『こちら』に掲載されているもの(後段の文章は、この後、「テクノロジーの業界にある会社は少しの改善・変化だけではジリ貧になる」といった内容に続いていきます)。

* * *

さて、ロシアによるウクライナへの侵略が続き、米国のインフレが7.9%となるなか、株式市場はいったいどうなるかと心配されている方も多いでしょう。

そういった方には、2012年にバフェットが綴った『株主への手紙』が参考になるかもしれません。 

実はこの一部を私は過去の著作で抄訳したことがありますので、以下に掲載させて頂きます。

* * *

『危機に際して安全なのは現金か。だとすると円なのか、ドルか。あるいはゴールド(金)を考えるべきかー。

稀代の投資家、ウォーレン・バフェットは、2012年2月、バークシャー・ハサウェイ社の株主に宛てた年次レターの中で、この点について検討した。

バフェットによれば、いろいろな種類の資産価格は変動するが、その資産のリスクが高いかどうかは、資産が有している「購買する力」で判断されるべきだ。

たとえ価格があまり変動しなくても、資産のリスクが高いといったことがあり得るのだ。

こう述べた上で、バフェットは資産を3つのグループに分類した。

以下、バフェットのレターを要約してみよう。

【第1のグループ】「現預金、債券などの貨幣価値に立脚した資産」

これらは通常安全と考えられているが、実はもっとも危険だ。

というのは貨幣の価値は政府や中央銀行が決めるもので、インフレによってこれらの資産の購買力は減ってしまう。

安定した通貨に対する人々の願いが強い米国でさえ、ドルの価値はびっくりするほど下落してきた。

私がバークシャーの経営に就いた1965年と比較してみると、現在ではドルは86%も下落し、当時1ドルで買えたものがいまでは7ドルも払わないと買えない。

債券はどうか。

同じ期間、つまり1965年以降、今日(2012年)まで47年間、米国債、それも1年物の短期国債で毎年期限が来るとロールオーバーする(次の1年物に乗り換える)という方法で運用していったとしたら、どういった結果になっただろうか。

平均で年率5.7%の金利がついた計算になるが、利息に対して税金を払わなければならなかったことを考慮すると、この運用方法でもこの間のインフレに勝てない。

47年間の間に購買する力はまったく増えないのだ(もちろん短期の米国債は流動性、換金性の面で優れているのだが・・)。

【第2のグループ】「それ自体は何かを生み出すものではないが、誰か別の人が購買してくれるだろうとの思いで、多くの人が購入している資産」

17世紀にはチューリップの球根であったし、現在ではゴールド(金)だ。

金は産業用や装飾用に使われるが、それだけの用途では、とてもではないけれど毎年生産される金の量を吸収することができない。

ほとんどの場合、人々は金を違った目的で所有する。

つまり誰か別の人が(できればもっと高い)値をつけて購入してくれるだろうという希望だ。

人類がこれまで生産してきた金の総量(地上在庫)は17万トン。1辺68フィートの立方体にしかならず、野球場の内野部分にすっぽりと収まってしまう。

この金すべてを現在の金価格1オンス1750ドル(訳者注:2013年12月末現在1200ドル;2022年3月11日現在1999ドル)で計算すれば、9.6兆ドルになる。

この金額はどういう金額だろう。

全米の農耕地(4億エーカーあって毎年2000億ドルの農作物を産出している)を購入して、なおかつエクソン・モービル社(毎年400億ドルを稼ぎ出している)を16社買った上に、さらに1兆ドルのお釣りがくる金額だ。

これから100年経っても全米の農耕地は価値ある農作物を産出し続けるだろうし、エクソン・モービルは稼ぎを上げ続けるだろう。

一方、金の方はというと、何も生み出さない。

あなたは金を優しくなでることができるが、金は何も答えないだろう。

【第3のグループ】「価値を生み出すことができる資産」

会社(会社が発行する株式を持つことで会社の所有者になれる)、農地、不動産である。

これから100年後、通貨が金本位性に変わろうと、貝殻をベースにしようと、サメの歯を使おうと、あるいは今日のように紙に印刷をしたものを使おうと、人々が必要とするものは、究極のところ、農産物であったり、工業製品であったり、住居スペースだ。

これらのものを生み出すことができるものが、これから先も価値を維持し続ける。

2008年のリーマンショック直後、多くの人々は「現金こそもっとも貴重で王様だ(Cash is King)」と言った。

今となって分かることだが、このときにやるべきことは現金を手にするのではなくて、その現金を使って株や土地を買うことだったのだ。

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2022年1月15日 (土)

荒廃する日本~これでいいのかジャパンインフラ

『荒廃する日本~これでいいのかジャパンインフラ』(日経BP社;2019年)。

本書は国土交通省出身の専門家10名が著したもの。

A4版という、本としては大判な体裁で、カラー写真や図版が豊富。

あっという間に読み終えてしまいました。

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国土交通省関係者が書いたものだけに『もっとインフラ投資、公共事業投資を!』といった主張で全編が貫かれています。

つまり政治的に中立という訳ではありません(予算をコントロールする立場の財務省からすると違う意見も出てきそう)。

しかし地球温暖化の影響によるのか、異常気象が頻繁に日本列島を襲うようになっているーこうした現実は無視できないでしょう。

本書は、道路、治水・利水、下水道、港湾、都市といった形で章立てされています。

個人的には、下水の章と、港湾の章については、知らなかったことが随分とあり、勉強になりました。

都市の章は、コンパクトシティを推進する立場。成功例としてLRTシステムの富山市などがあげられています。

しかし、LRTシステムの富山市、あるいは青森市などには、現場から様々な意見が上がっていることも事実(『こちら』および『こちら』)。

そういった声を踏まえた著述も欲しかったと思います。

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2021年10月 1日 (金)

ブレイクスルー賞

10月になりました。

来週月曜日(日本時間)からいよいよノーベル賞が発表になります。

ところで、これから先の将来、ノーベル賞の対抗馬となるのかどうか、ブレイクスルー賞(『こちら』)について・・。

少し前のニュースですが、9月9日に発表されました。

受賞者は5つの分野にわたり、賞金は各受賞分野(複数人のケースも)につき3億円、賞金総額は約15億円にも及びました。

(日本の新聞には香取教授と望月教授の受賞のニュースしか伝わらず、全体像が分からなかったので、まとめてみました)。

5つの受賞分野のうち、生命科学の分野では、次の3分野に生命科学ブレイクスルー賞が授与されました。

(1)mRNA therapies関連の功績で、Katalin Karikó氏(独ビオンテック社) and Drew Weissman(米ペンシルバニア大学教授)

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           Katalin Kariko(From Wikimedia Commons) 

(2) the next generation sequencing technologiesで、 Shankar Balasubramanian(ケンブリッジ大学教授), David (ケンブリッジ大学教授) and Pascal Mayer(仏企業AlphanososのCEO)

(3)amyloid diseasesの研究でJeffery W. Kelly教授

次に、

(4)基礎物理学ブレイクスルー賞は東大の香取秀俊教授と米国NIST(国立標準技術研究所)とコロラド大学のJun Ye氏。

(5)数学ブレイクスルー賞は京大の望月拓郎 数理解析研究所教授。

5つの受賞分野のうち、2つまでがCovid-19関連というのが特徴的。

また日本人が2名選出されたのも嬉しいニュースでした。 

ところで、ノーベル賞の方は、

(1)ノーベル文学賞選考関係者の夫にレイプ疑惑が浮上、2018年文学賞選考が見送られた

(2)平和書について政治的だとの批判がある(『こちら』

(3)数学賞がない

といったことがこれまでも言われてきました。

権威という観点からすれば、ノーベル賞の右に出る賞はないのでしょうが、ブレイクスルー賞が最初に発表されてからもうすでに9年。

年を追うごとに注目度が高まってきました。

ノーベル賞に対してブレイクスルー賞という「競争相手が出てきた」というのは、望ましいことだと思います。

と言いつつ、やはり来週から毎日発表されていく今年のノーベル賞に注目してしまします。

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2021年7月 1日 (木)

ブンヤシット・チョクワタナー氏

私がブンヤシット・チョクワタナー氏にお会いしたのは、興銀の審査部に在籍していた時。

今から30年ほど前のことだ。

ブンヤシットさんは、タイの財閥の総帥にもかかわらず、腰が低く、『能ある鷹は爪を隠す』を地で行くような人だった。

それから後もブンヤシットさんのことはずっと私の記憶に残り、2017年、日経ヴェリタス紙に『Money Never Sleeps』という連載コラムを書いていた時に彼のことを記事にした(『こちら』)。

そして今日、ブンヤシットさんが日経新聞の『私の履歴書』に連載を始めた。

今月は毎朝、日経朝刊を読むのが楽しみになる。

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2021年3月28日 (日)

安すぎるニッポン

日経新聞の記者が書いた『安いニッポン』

この本の内容は帯に凝縮されていると言えよう。

いわく「年収1400万円は低所得」。

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日本は過去20年、いや今となっては30年かもしれないが、ずっとデフレだった。

一方で、海外はそれなりにインフレだったから、いつの間にか差がついてしまった。

本の裏表紙。

こちらの帯にはもっと多くの情報が並ぶ。

これによると日本人の平均年収はアメリカの59%。

約半分しかない。

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本書では日経新聞の記者が何人かで協力して取材にあたっているので、海外の状況が丹念に調べ上げられている。

そこに浮かび上がる実態は、題名の『安いニッポン』どころか、もっと悲惨。

『安すぎるニッポン』であり『買いたたかれるニッポン』だ。

ところで、この種の著作には2つの大きな反論が生じがち。

反論のひとつ目。

『それって為替レートの問題じゃないのか』。

為替の要因もたしかにあるのだろうが、主たる要因と言えるのかどうか。

たぶん違う。

詳しくは、本書の40~44頁で説明されている。

もう一つの反論。

『安いことは生活しやすいことだし、何か問題でもあるのか』。

これに対する反論も本書の随所で語られているが、

本書227-229頁に改めてまとめて記載されている。

それではいったい解決策はあるのか。

本書には労働市場の硬直化の是正など幾つかのヒントが掲げられている。

河野さん(BNPパリバ)はこうコメントする(本書248-249頁)。

『安いニッポンから脱するためには、国は課税の方法を考える必要がある。

アベノミクスでは消費税増税と法人税減税を行ったが、付加価値は資本所得と労働所得の合計であることを考えると、その組み合わせは労働所得への課税強化を意味し、労働に不利な税制改革を続けてしまったと言うことである』 

ところで本書ではあまり触れられていないが、『安いニッポン』は実は『超安い日本の地方』でもある。

それは例えば日本の地方都市に行って食事をしてみれば分かるだろう。

本書には港区の住民の平均所得は年約1217万円と出てくる(82頁)が、

これは地方で暮らす人にとっては信じられない数字に違いない。

この日本の地方の問題をどうするか。

都心に住む人がもっと気軽に、そして安く、地方に行ければ地方は活性化する。

地方で消費するからだ。

米国だと高速道路は基本無料だし、クルマに乗って他州に遊びに行くことも多い(ガソリン代も安い)。

ところが日本ではそうはいかない。

安いニッポンでも都会に住む人が地方に行くには意外とコストがかかるのだ。

何よりも高速代が高い。

繰り返すが、地方は東京などよりも、もっと難しい状況に置かれている。

これはGoTOトラベルといった一時的処方箋では解決しない。

高い移動料金といった根本的問題にメスを入れる必要があるように思う。

戦国時代、織田信長は、通行税(関銭)を取る関所を廃止し、人やモノの流れを活発化させたのである。

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